楽しみながら、本質を探る〜ビズクリサポーターの支援事例・西田雄一郎〜
2026.03 02
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    Takumi Kobayashi

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    Bizcre編集部

楽しみながら、本質を探る〜ビズクリサポーターの支援事例・西田雄一郎〜

それぞれが培ってきたバックグラウンドやスキルをもとに、経営者のガイドランナーとして伴走するビズクリサポーターたち。日々どんな課題に対して、どんな考え方で、どんなアプローチを行っているのか。ここではビズクリサポーターたちが取り組んできた支援事例をご紹介します。今回登場するビズクリサポーターは、理念構築や組織開発などの取り組みで企業を支援する西田雄一郎さんです。約1ヶ月という短期集中プロジェクトで、経営理念の再構築を提案し、全社を巻き込んだ事業承継の準備を進めた支援事例をご紹介します。
楽しみながら、本質を探る〜ビズクリサポーターの支援事例・西田雄一郎〜
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西田 雄一郎

西田 雄一郎 にしだゆういちろう

かんさい経営サポート 代表 中小企業診断士
かんさい経営サポート代表、中小企業診断士、MBA(経営学修士)、事業承継士。地方銀行で法人融資に従事した後、大手ITベンチャー企業で組織変革のマネージャー職や営業責任者を経験。現在は製薬会社の学術推進部でMR教育、専門医対応業務、マーケティングに従事しながら、副業として中小企業の経営戦略・パーパス経営・事業承継・営業強化を支援。

事業承継を中心に山積していた課題

今回ご紹介いただく支援事例について教えてください。

とあるパッケージ製造会社の事例です。創業から70年以上の歴史を持つ老舗企業でした。

 

どのような経緯で支援が始まったのでしょうか。

中小企業診断士の養成課程の一環で、実務実習の際に取り組んだ案件です。最も大きな悩みは、いかにスムーズに代替わりができるかでした。それに加えて、従業員が定着しない、工場が老朽化していて生産能力が頭打ちになってしまっている、といったように課題が山積していました。

 

課題が多岐にわたっていたんですね。

そうなんです。そのため、まずは課題の定義をするところから始めました。まず会社が保有する経営関連の資料やインターネット上で得られる業界情報をもとに現状把握を行った上で、フォーカスするべき課題は何なのかという仮説を立てるのです。その上でヒアリングや現地視察、従業員アンケートなどのプロセスを踏みながら仮説を検証・ブラッシュアップしていきました。

 

プロジェクト期間はどのくらいだったのでしょうか。

約1ヶ月です。課題を定義して、戦略を立てて、対応策を提案するまで、かなりスピーディに実行しました。週4回ほど打ち合わせを行っていた記憶があります。それほど密度高く取り組めば、限られた期間でも事業の方向性を見出すことができるのです。

 

理念の再構築で全社を巻き込む

1ヶ月という短期間で、どのようなアプローチを取られたのでしょうか。

まず定義した課題は、やはり「いかにスムーズな事業承継を行えるか」という点です。そこに対して、どのようなアプローチが最適なのか考えた末、経営理念の再構築を提案することにしました。

 

事業承継から経営理念へ。どういった流れでそこに辿り着いたのでしょうか。

なぜ事業承継するのか、どんな事業承継を行いたいのかを紐解いていくと、結局は理念にたどり着くんです。当時、社長は2,3年かけて会社を後継者に引き継ぐ準備を進めたいと考えていました。この会社はどんな存在なのか、これからどんな会社にしてほしいのか。その思いを理念として言語化して、幹部や現場の従業員が理解して、行動できるようにする。そうすることで、会社は強くなり、事業承継もスムーズに行くと考えました。

 

経営理念を再構築するプロセスで意識したことはなんでしょうか。

全体を巻き込んで、言語化して、それを浸透させて文化にしていくことです。それまでの経営理念を踏まえ、変えるべきところと変えないところについて、幹部の皆さんで話し合ってもらいました。

 

社長ではなく、幹部の方を中心に進めていったんですね。

はい。今後会社を担う幹部が腑に落ちる経営理念を定めて、新体制を構築することが肝要だと考えたのです。他社ではどのような経営理念を定めているのか、イメージを持ってもらうため類似事例を紹介したり、従業員アンケートを実施して、そこで得た従業員の思いを経営理念に反映したりすることで、経営理念に盛り込む内容や表現について考えるサポートを行いました。

 

どれほどの社員にアンケートを取られたのですか。

社内にいる約80人の社員です。そこから集めた声をしっかり形にすることで、一つの組織ができると考えています。

 

クルマの中で聞いた1時間がターニングポイント

1ヶ月のプロジェクトの中で、ターニングポイントはありましたか。

2つあります。1つ目は、先代の社長が1時間ほど人生観についてお話しくださったことです。苦しい時でも笑顔を忘れず、ご自身の思いを持ち、ご縁を大切にする。その講話で現社長の思いを知ったことで、戦略提案の方向性が見えてきました。
もうひとつは、大阪の工場視察の際、新しい社長が引率してくださったことです。新社長のクルマで本社へ向かうまで、いろいろお話を聞かせてくれたんです。新社長の生い立ち、会社の経緯、引き継ぐことに関する思いなど、車中の砕けた雰囲気だったからこそ本音で語ってくれました。そのときが大きなターニングポイントでした。

 

先代の社長と新しい社長、双方の思いが大切になる、と。

そうなんです。戦略やロジックだけでなく、パッションやパーソナリティも、理念や組織づくりの上では重要な要素なんです。分析を進めて方向性が見えたら、最後は思いが物を言うのです。

 

そうして聞き取った思いをどう具体化されたのでしょうか。

工場が老朽化していたので、新工場の建築時に新社長の思いを入れることを提案しました。新社長は「社員に優しくしたい、楽しく仕事してほしい」と語っておられたので、その思いを新工場でシンボル的に具現化してはどうかと。

 

具体的にはどのようなかたちになったのでしょうか。

毒性のある塗料を少ない水性塗料に変更したり、主婦の従業員のために時短勤務ができるようにしたり。そういう社長の思いを新工場でかたちにすることが、新体制の推進力になると考えました。

 

他にも具体的な提案はありましたか。

従業員アンケートから「もっと情報共有してもらいたい」という声があったので、経営理念を浸透させる方法として社内報を提案しました。これは先代の社長、新しい社長、ともにとても喜んでいただけました。

 

「これが私の支援スタイル」

最後に、支援者として最も大切にしていることを教えてください。

本質的な課題を見つけることです。社長が認識している課題は、実は表面的なものであることも多くあります。果たして本当に取り組むべきことは何なのかを問いかけて、仮説を立てて検証していく。その過程で本質的な課題を見つけていくのです。

 

本質的な課題を見つけるために、どのようなアプローチを取るのでしょうか。

まず現状を知ることです。事実ベースで情報を集め、分析し、方向性を導き出す。そして、経営者や従業員、いろんな方の思いを乗せていく。そういったプロセスの先に本質的な課題解決ができるのだと考えています。

 

西田さんは現在、副業として経営支援の活動をされているとお聞きしました。

はい。社内では第1号の副業実践者なので、後からチャレンジされる方がやりやすいように、ちゃんと周囲から認められるかたちで価値を発揮していきたいと思っています。ある程度軌道に乗って、会社に恩返しができたら、いつかは独立したいという気持ちもあります。

 

会社への貢献も考えておられるんですね。

はい。私が勤める製薬会社でも、中小企業診断士などの知見を活かし、患者さんを中心に発想するUX(ユーザーエクスペリエンス)的なアプローチで新しい商品の開発をリードしています。評価も上々で、本社にプレゼンする機会もいただきました。MBAや中小企業診断士の資格を取っていたからこそ、これまで社内になかった視点からの提案ができたのだとは思います。

 

最後に、西田さんの支援はどのような企業にフィットすると思いますか。

10年後のビジョンを明確にしたい、そして、そのために何をすればいいか考えたい、といった企業だと思います。10年後の目標があるから、5年後や3年後に何をするべきかブレイクダウンして考えることができます。遠くのビジョンを持つことで、実は足元も見つめ直せるんです。ワクワクすること、楽しむことを大切に、まずはそこから一緒に考えていきたいですね。

 

西田さんが特に影響を受けた書籍をご紹介します。

『戦略サファリ』(ヘンリー・ミンツバーグ、ブルース・アルストランド、ジョセフ・ランペル著)

「戦略の10の学派を紹介した本です。その中でも『ラーニングスクール』という考え方、つまり現場で戦略を修正しながら全体が学んでいく組織という概念に強く共感しました。MBAでの学びと重なる部分も多く、私の支援スタイルの基盤になっています」

『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』(吉田満梨・中村龍太著)

日本で初めて「エフェクチュエーション」という講義をされた吉田満梨先生から大学院で直に学ぶことができました。5つの原則を意識しながら、中小企業診断士としての活動を実践し、多くの出会いがあり、突破力や諦めない力を身に付けていると実感しています。難しい考え方をわかりやすく解説されています。

『生き方 人間として一番大切なこと』(稲盛和夫著)

節目や迷った時に何度も読み返している本です。稲盛和夫さんが経営者というよりも、人間としての生き方を描かれています。利他の心をもって人と関わり、自分自身の言葉と行動を一致することを大切にし、人に見られていなくても、お天道様が見ていると捉えて自分を律することを日頃から意識しています。

戦略サファリ

ヘンリー・ミンツバーグ、ブルース・アルストランド、ジョセフ・ランペル(著)
単行本 ¥4,620

生き方 人間として一番大切なこと

稲盛和夫(著)
単行本 ¥2,090

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