政治学者志望からMBA取得、そしてITコンサルタントへ。私が「ビズクリ」をつくる理由
荒井 雄介 あらい ゆうすけ
2003年より大手IT企業にて大規模システム開発プロジェクトマネージャー及びIT戦略策定コンサルタントとして、官公庁、金融機関、製造業等数多くのプロジェクトにおいて中心的役割を担う。顧客の事業戦略策定、ITコンサルティング及びITシステム開発プロジェクトの全体マネジメントに従事している。
この人たちには勝てない。IT業界で戦うために見つけたコンサルタントの道。
まずは経歴から教えてください。
学生時代に学んでいたのは政治学です。そのまま政治学者になろうと思って大学院まで進学したんですが、研究者としてキャリアを築く厳しさを知って就職を考えるようになりました。ただ、文系大学院生の就職活動は、学部生ほど情報や機会が豊富にあるわけではなく、業種や職種を絞らずさまざまな企業を受けていましたね。その中でたまたま内定をもらったのがNTTデータでした。文系出身なのにIT企業に就職したんです。
就職後はどのようなキャリアを歩んだのでしょうか?
NTTデータに入社してすぐエンジニアとして生きていく自信を失ってしまって(笑)。というのも、研修で一緒になった同期が東京大学の理系大学院卒のエリートだったんです。最初の数分で「こいつには一生勝てない」と悟りましたね(笑)。「では、このIT業界の中でどうやったら自分は戦えるんだろう」と一生懸命考えていく中で見つけたのが、「ITコンサルタント」という職種でした。当時は、まだ新しい概念だったため社内にロールモデルもなく、上司たちに提案しながら自分で仕事をつくっていきました。
そこからコンサルティングのキャリアが始まったんですね。
はい。しばらくして「もっとITコンサルティングのキャリアを極めたい」と思い転職を決意し、外資系コンサルティング会社のアクセンチュアに転職して2年ほど経験を積みました。その後、子育ての環境を考えて長野県に移住し、大手SIerのグループ企業に就職したんです。思い返せば、ここでの経験がキャリアの転機でした。
ITシステムの導入は手段。目的を辿れば経営戦略に辿り着く。
都内の大手企業から長野県の地方企業に転職されたことが、なぜ「キャリアの転機」になったのでしょうか?
都内で働いていたときと違い、対峙するクライアントは地方の中小企業です。「ITシステムの導入」という依頼を受けても、よく話を聞くと、解決すべき課題はITシステム以前の話になることが多いんですよね。たとえば、「在庫管理システムを導入したい」というオーダーがあっても、システムを使いこなす業務フローを構築しないといけないし、適切な在庫計画をつくらないといけません。そのような準備が整っていない状況でITシステムを導入しても”もぐら叩き”的に次から次へと新しい課題が出てくるだけで、「在庫を減らす」という課題を解決できないんです。
課題を解決したり、目的を達成したりするためには、一歩踏み込んだ提案をする必要があったと。
そうですね。ITシステムは顕在化されたニーズを満たすための氷山の一角に過ぎません。その背景を探っていくと、業務の改善が必要になったり、そもそも業務以前に会社としてどんな方向性で歩んでいきたいのかといったところに辿り着きます。そんな経験を重ねる中で経営戦略の必要性に気づいていきました。その後、グロービス経営大学院を卒業してMBAを取得し、現在は、長野市内でコンサルティングファームの取締役を担いながら、中小企業のIT戦略や経営戦略の支援に携わっています。
そのようなキャリアを重ねてきた中で「ビズクリ」に参画した背景を教えてください。
もともとは「ビズクリ」を運営するBCCの伊藤さんから「経営戦略の構築を支援するクラウドサービスを立ち上げたい」という相談をもらったことがきっかけです。そもそも私自身、地方の中小企業に対峙する中で、とある課題意識を抱いていました。それは、経営戦略が必要な中小企業がなかなか最適解に出会えないということです。一般的な経営コンサルタントに依頼すると高額な報酬が発生します。しかも、仮に素晴らしい経営戦略を描いてもらったとしても実行まで担保しなければ”絵に描いた餅”になりかねません。それだったら、わざわざ高額な経営コンサルタントに依頼しなくてもテクノロジーで担保できるところは担保できたらよく、「ビズクリ」によって、全国の中小企業が経営戦略を立てられる世界が実現したらいいと思ったんです。
もともと抱いていた課題意識と「ビズクリ」の思想がマッチしていたと。
はい。ただ、もちろんクラウドサービスだけで提供できる価値には限界はあります。「ビズクリクラウド」は、あくまでソリューションのひとつに過ぎません。”経営者のガイドランナー”というコンセプトを実現するために、必要に応じてサービスを展開していければと思っています。
ビズクリは、経営課題に向き合う武器となる。
IT業界での経験をバックボーンに持つ荒井さんは、ITと経営戦略の関係性をどう捉えていますか?
これまでは、ITは業務効率化などを実現するための道具でした。ただ、近年では「データは次のオイル」と言われたり、ヒト、モノ、カネに並ぶ第4の経営資源として「情報(データ)」があげられたりとITやデジタル領域の重要性が高まっています。DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が広まっているように、今後はますますデータ活用を前提とした経営戦略が主流になっていくでしょう。
極端な例ですが、仮にインターネットを全く知らない企業が経営戦略を立てようとしても、大切な視点が抜けている説得力の低い戦略になってしまいそうなイメージが湧きませんか?これからは上記の「インターネット」の部分が「AI」などに置き換わっていくのではないかと思っています。今やあらゆる人がインターネットを使いこなしていますが、いずれ多くの人がAIなどを使いこなす未来がやってくるでしょう。そのときに、経営者はAIに何ができるのか、貴重な経営資源であるデータをどう活用できるのか、といったことを知っていく必要があると思うんです。
最後に、「ビズクリ」によってどんな世界を実現したいと思いますか?
「ビズクリクラウド」を活用すれば経営者はある程度経営戦略を立てられるようになるでしょう。でも、経営者の悩みは、それだけで解消できるとは思っていません。たとえば経営戦略の実行に関する悩みだったり、もっとエモーショナルな悩みだったり。そういったクラウドサービスだけでは手が届かない悩みもサポートできたらと思っています。
そのために、中小企業診断士をはじめ日々クライアントの経営課題に向き合っている士業の方々と手を取り合っていきたいです。中小企業の経営者が直接使用するのはもちろん、経営課題に向き合う士業の武器として「ビズクリ」というサービスを磨いていきたいと思いますね。