事業拡大の夢を、財務で支える〜ビズクリサポーターの支援事例・礒亮次〜
2025.11 28
  • Writing

    Takumi Kobayashi

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    Bizcre編集部

事業拡大の夢を、財務で支える〜ビズクリサポーターの支援事例・礒亮次〜

それぞれが培ってきたバックグラウンドやスキルをもとに、経営者のガイドランナーとして伴走するビズクリサポーターたち。日々どんな課題に対して、どんな考え方で、どんなアプローチを行っているのか。ここではビズクリサポーターたちが取り組んできた支援事例をご紹介します。 今回登場するビズクリサポーターは、財務の観点から経営をサポートする礒亮次です。事業拡大を目指す運送会社さまの財務戦略の構築と実行の支援を行った事例をご紹介します。
事業拡大の夢を、財務で支える〜ビズクリサポーターの支援事例・礒亮次〜
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礒 亮次

礒 亮次 いそりょうじ

株式会社ビジアド 代表取締役社長 MBA
株式会社ビジアド代表取締役社長、MBA(経営学修士)/グロービス経営大学院。帝国データバンクにて企業信用調査員として活躍後、経営・財務コンサルタントとして独立。財務パートナーとして経営視点から「社外のNo.2のような視座」を持ち、経営者と共に経営の重要事項に向き合う。社長のビジョンや方針を理解し、社長だけでなく幹部社員ともコミュニケーションを取れるパートナー的な存在を目指している。

足元の数字が見えない不安

今回ご紹介いただく支援事例について教えてください。

運送業の会社です。大手の運送会社出身の方が立ち上げた企業で、事業拡大に向けて取り組んでいこうというフェーズでした。

 

どのような経営課題を抱えていたのでしょうか。

 経営者の方は、大きく2つの課題を抱えていました。1つ目は「そもそも足元の損益状況を把握し切れていない」という課題。2つ目は「今後の事業拡大を見越したときのお金回りの漠然とした不安」です。

 

「足元の損益状況を把握し切れていない」というのは、どういう状態だったのでしょうか。

 月次での試算表がつくれていない状態のことです。つまり、「今月はどれくらい利益が出ているのか」「手元の資金はどう推移しているのか」が、リアルタイムで把握できていないということです。特に運送業は、1年間の中で繁忙期と閑散期の差が大きい業種です。いつ売上が大きく増えたり、落ち込んだりするのか、それに応じて手元の資金はどれだけ残るのか。年間を通じて財務状況を正確に把握・予測して、アクセルとブレーキを踏むべきタイミングを予見していないと、経営全体に関わる重要な意思決定ができませんし、事業拡大に向けた見通しも立てられません。

 

そのような課題に対して、礒さんはどのようなアプローチで支援されたのでしょうか。

私の強みは、財務戦略の構築と具体的な実行支援です。そのために、まずは徹底的なヒアリングからスタートしました。お金やモノの流れをしっかり把握するために「誰に・何を・どうやって提供しているのか」、取引するクライアントや取り扱う荷物まで、すべてヒアリングして詳細なビジネスモデルをインプットします。その上で、「数年後どんな経営状況になっていたいか」を社長と徹底的にディスカッションして、財務の観点で解決できるところを戦略から実行まで伴走しながらサポートしていきました。

 

月次決算で「今」を見える化する

具体的にはどのような支援を行ったのでしょう。

まず取り組んだのが、月次決算を組める体制の構築です。顧問税理士の方にお話を聞くと、キャパシティ不足で月次で試算表を作成することが難しいことがわかりました。そこで、その顧問税理士の方だけでなく、経理担当者と連携しながら、クラウド会計ソフトなどのツールを活用して月次決算を組める体制を構築し、毎月きちんと数字を締めて、損益とキャッシュフローを把握できるようにしていきました。 経理の仕組みを整えるため、クライアント社内の計上ルールを整理したり、経理担当者の業務フローのレクチャーも行ったりしました。そのようにして、翌月中旬〜後半には前月までの試算表が出来上がるような状態をつくっていったんです。一言で言うと、中小企業に必要な最低限の内部管理体制の構築になります。 

 

クライアントの社内にも入り込んで支援しているのですね。

そうですね。経営陣にも「どれだけ忙しくても、毎月の面談は必ず実施する」と約束してもらいました。預金残高がどれだけあるか、借り入れの返済状況はどうか、資金繰りとキャッシュフローはどうなっているのか……月次決算をもとに計画と実績のバランスをチェックする習慣をつくっていきました。ちなみに、私の支援スタンスが「経営メンバーのような立ち位置で参画し、経営実務を行いがら経営判断・意思決定をサポートする」ことが多いため、必然的に社長だけでなく、幹部、社員など社内の方々とコミュニケーションを取ることも非常に多く、経営会議、営業会議などにも参加するケースも珍しくないです。

 

他にはどのような支援を行ったのでしょうか。

資金調達の支援も行いました。月次での面談を行う中で、今後の計画をお聞きすることもあります。その内容を踏まえて「このタイミングで、この銀行から、こういう条件で資金調達をしたい」というプランを練るんです。そして、銀行にも、どの時期にどれだけの資金調達を検討しているかを伝えておいて、然るべきタイミングで商談に来てもらうようにセッティングしました。
必要なタイミングで必要な金額を借りられるように銀行を味方にする、と言ってもいいかもしれません。銀行側も常に融資先を探していますから、契約を結びたい銀行と資金調達をしたいクライアントとの間に立って、双方によりよい条件を引き出していきました。

 

財務は「未来を見る」ための道具

実際にクライアントからの評価はいかがですか。

とても感謝していただいています。これまでは運送業という業種柄、繁忙期と閑散期で売上が大きく変わるため、一歩間違えると、資金繰りが急激に悪化してしまう、という不安を抱えていました。そのため、銀行融資や設備投資のタイミングを判断するのに戸惑っていたんです。でも、月次決算と面談を行うことで、その不安は解消されたようです。

 

まさに当初の課題だった「お金回りの漠然とした不安」が解消されていると言えそうですね。

そうですね。そもそも財務は未来の視点なんです。過去の数字を見るだけでなく、これから先どうなるかを予測して、最適なタイミングで然るべき経営判断ができるようにするところに財務の本当の価値があると思っています。

 

未来に向けた経営判断のサポートを行う、と。

はい。未来を見通す上で、私は必ず3つのシナリオを用意します。それがアップサイドシナリオ、ベースシナリオ、ダウンサイドシナリオ、つまり、事業が好調な場合、想定通りの場合、不調な場合の3パターンです。そうすることで、最悪の場合でも会社が倒産しないように準備ができるんです。そうしたシナリオを考えたり、最適なサポートを行ったりするためにも、私は中長期的な伴走支援を前提としています。

 

スポットの支援では、解決できない課題があるんですね。

はい。たとえば、「この融資だけ何とか通してほしい」という依頼に応えた場合、その場はよくても、次回以降の与信判断に影響して逆に将来的に資金繰りに苦しむことにもつながりかねません。本当に大切なのは、未来を見据えた財務体質をつくることにあります。
毎月数字を見ながら対話を重ねることで、経営者の「やりたいこと」の実現に貢献したいと思っています。

 

「これが私の支援スタイル」

経営支援を行うにあたって、最も大切にしていることは何でしょうか。

経営者の「やりたい」に対して、財務の視点で最適な経営判断をサポートすることです。その想いを実現するために、どんなタイミングで、どれだけアクセルを踏めばいいのか、いつブレーキを踏むべきか。舵取りを誤らないようにサポートすることを心がけています。
企業データベースをつくる会社に所属していたとき、調査員として企業を回る中で、資金繰りが悪化して、本来なら続けられたはずの事業が終わってしまう企業を目の当たりにしてきました。「もっとこういうことができたら倒産をしなかったのでは。自分に何かできたのでは」と悔しい思いをしたことも少なくありません。だからこそ、倒産しにくい財務体質をつくって、経営者の夢や情熱を、財務という土台でしっかり支えたいと強く思っています。

 

最後に、礒さんの支援はどのような企業にフィットすると思いますか。

成長企業、もしくはこれから事業を拡大させて会社を伸ばしていこうという情熱のある経営者にフィットすると思います。「守り」だけでなく「攻め」の財務戦略を一緒につくろうとする、前向きな経営者の方とお付き合いできれば嬉しいです。

 

【礒亮次のおすすめ書籍】

『成功哲学』(ナポレオン・ヒル著)

『成功への情熱―PASSION―』(稲盛和夫著)

『コーポレートファイナンス第10版 上下』(リチャード・A・ブリーリー、スチュワート・C・マイヤーズ、フランクリン・アレン著)

経営者として大切な考え方や姿勢を学べる2冊と、財務の専門的な知識を深められる1冊をチョイスしました。

成功哲学

ナポレオン・ヒル (著)
単行本 ¥2,900

成功への情熱―PASSION―

稲盛和夫(著)
文庫本 ¥858

コーポレートファイナンス第10版 上下

リチャード・A・ブリーリー、スチュワート・C・マイヤーズ、フランクリン・アレン(著)
単行本 ¥6,600

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