知識だけでなく”人間力”が試される。この仕事を通じて「笑いと驚き」を届けたい。
2023.09 26
  • Writing

    Takumi Kobayashi

  • Photograph

    Ayako Shohata

  • Edit

    Thesaurus inc.

知識だけでなく”人間力”が試される。この仕事を通じて「笑いと驚き」を届けたい。

“経営者のガイドランナー”というコンセプトを掲げる「ビズクリ」。その核となるサービス「ビズクリサポート」のビズクリサポーターは、どんなキャリアを重ねてきたのでしょうか。今回は、組織づくりに関わるコンサルティングに取り組む社会保険労務士(以下、社労士)・下村勝光にインタビュー。よりよい組織風土をつくるためにどうすればいいか、企業経営者と膝を突き合わせながら考え、対峙し、議論してきた下村のキャリアをご紹介します。
知識だけでなく”人間力”が試される。この仕事を通じて「笑いと驚き」を届けたい。
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下村 勝光

下村 勝光 しもむら かつみつ

社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員 社会保険労務士

社会保険労務士として、働きがいのある会社づくりをサポートする。手掛ける領域は幅広く、給与計算など労働法務にもとづく手続きはもちろん、人事評価制度設計や社員研修など組織づくりに関わるコンサルティングまで、”二刀流”のソリューションを提供できることが強み。経営者はもちろん、社員やその家族の人生にまで向き合う覚悟を持って、本質的な提案を行うことにこだわっている。

自分の腕で力強く生きていくために選んだ士業の世界。

まずは経歴から教えてください。

大学では、経済学部に所属していました。ただ、学生時代はバイト三昧で、百貨店の保存食品売り場で働いたり、プールの監視員や引っ越しのバイトなんかも経験して1ヶ月で30万円以上稼いでいたこともありましたね(笑)。
そんな中で迎えた就職活動。私は新卒でカーリース会社に就職しました。もともと士業の世界を目指していたので、社労士資格取得のための勉強時間を確保できて、残業が少ない休日が多い企業を選んだんです。

なぜ士業の世界を志したのでしょう?

自分の腕さえあれば、景気や外部環境に左右されることなく長く活躍し続けられる士業に憧れを持っていたんです。将来、自分に子どもが生まれたら、たとえ逆境の中でもいきいき働いて、強く生きていく父親としての姿を見せるのが夢でした。

そこで目指されたのが社労士とのことですが、いくつもある士業の中でなぜ社労士に照準を合わせたのでしょうか?

社労士の仕事は、いわゆる人事・労務に関する相談に乗ることがメインで、いわば企業の内部環境をよくする仕事だと言えます。法律が絡むとはいえ、人や組織に関わる仕事だから「これさえしておけば大丈夫」という絶対的な正解がありません。そう考えると、提案できることの幅が広そうだなと考えたんです。しかも、私が社会に出て行く2000年代初頭は、まだまだ「組織づくり」の領域は発展していく途上でしたので、これから世の中にますます求められていくこの世界で勝負しようと決めました。

その後、カーリース会社からどのようにキャリアを歩まれたのでしょうか?

カーリース会社を退職後、次亜塩素酸ナトリウム製造メーカーへ転職し、管理部⾨にて労務管理や経理の実務を担当しながら、無事社労⼠試験に合格しました。
プライベートでは結婚し、子どもも2人生まれました。そんな中、満を持して転職を決意し、会計事務所が母体の人事労務事務所に面接を受けに行ったんです。当時はまだ未経験だったので普通に考えると受かる可能性は低いものの、将来活躍できる自信が自分にはありました。面接の場でも「即戦力の実務経験者を求めているのであれば、私のことは採用しないで構いません。その代わり、未経験ですが5年間で独立できるまで実力をつけるつもりです。ハングリーな人材に魅力を感じるのであれば私を採用した方がいいと思います」と伝えました。

すごい度胸ですね!

はい。その結果、無事入社することができました。給与計算など基礎的な手続きを覚えることからスタートし、徐々に業務範囲を拡げ、次第に人事・労務に関するコンサルティングの案件も手掛けるようになっていきましたね。そして、2006年31歳の時に現在の前⾝となる社労⼠事務所を⽴ち上げ、事務所の拡張移転を踏まえ、2016年に社会保険労務⼠法⼈MIRACREATIONを設⽴し、代表に就きました。以来、給与計算をはじめとした労働法務に関する相談から、人事評価制度の設計、社員研修などの組織づくりのコンサルティングまで、いわば”二刀流”のキャリアを活かして、多くのお客様と向き合い続けています。

経営者に向き合うということは、組織に関わる多くの人生にも向き合うということ。

お客様と向き合う中で、日々どのようなことを感じていますか?

この仕事は、相手の人生や価値観を変えてしまうほど影響力の大きな仕事だと思っています。

と、言いますと?

たとえば、以前とある企業の経営者が「人事評価制度をつくりたい」と相談に来られました。詳しくお話を聞くと、「社員との面談が大嫌いなので、面談しなくてもすぐに評価が出せるものにしてほしい」と依頼されました。
「果たしてそのオーダーに忠実に応えたとしても組織にとって望ましい未来が訪れるのだろうか」……そんな想いを持ちながら何度も対話を重ねていくうちに、いつの間にかその経営者は社員と関わるのが大好きになっていたんです。今では面談も率先して引き受けるし、人と向き合うことにやりがいを感じるようになっています。そんな過程を経て、その経営者から「大切なことに気づかせてもらった」と感謝の言葉を頂くことができました。

まさに相手の価値観をガラリと変えた出来事ですね。

はい。もっと言うと、経営者に影響を与えるということは、その組織にいる社員のみなさん、そしてその先にいる社員のご家族に影響が及ぶとも言えます。だから、生半可な仕事はできません。小手先のテクニックに頼るのではなく、たくさんのステークホルダーの人生を背負う覚悟を持って対峙することが大切なんです。

知識や技術だけじゃなく、いわゆる”人間力”も大切だと。

その通りです。時には、経営者と意見がぶつかることもあります。でも、関わる人々を幸せにするためにどうしても伝えないといけないことがあるんですよね。契約を切られるリスクも覚悟の上で膝を突き合わせ、意見を交わし、「この人の言うことなら信じてもいい」と思わせられるかどうか、そんな凄みを自分に宿すことが大切なんです。
そもそも経営者たちは、修羅場をくぐり抜けてきた方ばかりで、人間として成熟されていますし、人を見る目も鋭い方も多くいます。そんな中で信頼を獲得するには、自らも”人間力”を高めるしかないんですよ。

「社労士」が、子どもたちの憧れの職業になる未来に向けて。

今後の展望について教えてください。

「仕事を通じて『笑いと驚き』を提供する」が私のモットーです。それは、これからも変わりません。ただでさえ人事・労務と聞くと、堅くて難しいイメージがつきもの。だからこそ、いかにお客様にわかりやすく伝えられるか、多くの人におもしろい仕事だと思ってもらえるかにこだわりたいんです。そして、いつか小学生の憧れの職業として「社労士」がランクインしたら良いなと思っているんですよ。そのためには、お客様が思わず周りの人に「こんな素敵な仕事をしてくれる人がいるんだよ」と伝えたくなるくらい”いい仕事”を一つひとつ積み重ねていくこと。その輪が広がって、いつか子どもたちに届いたらきっと「社労士」というイメージが素敵なものになっているんじゃないかなと思うんです。

最後に「ビズクリ」の取り組みを通じて、どのような価値を生み出したいと考えていますか?

私の中に「個人の限界は、組織の限界ではない」という合い言葉があります。これは、自分一人でできることに限界があっても、誰かと手を組んで力を合わせればできることが広がるということ。「ビズクリ」のように、さまざまな専門家が得意分野を掛け合わせてお客様をバックアップする体制ができれば、今よりもっと喜んでいただけるはず。そのように会社の垣根を越えたチームとして、サービスを磨き上げ、提供できる価値を大きくしていきたいと思います。

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